「イザベラは今、意識が戻ったばかりなんだぞ! それを直ぐにも追い出すだなんて、少し酷すぎやしないか!?」

 冷酷な彼の言葉に、声を上げたのはヴィクトール。

 そんな彼を美しい青年は嘲笑った。

「ヴィクトール⋯⋯お前もこの女が何者なのか分かれば、そう心優しく接してはいられまい」

「それは、どういう────」

「その女に聞け」

 冷たく言い放つと彼は踵を返す。その背中をイザベラは反射的に呼び止めていた。

「クラウス」────と。

 その言葉に彼も立ち止まる。

「あなた⋯⋯クラウスよね? 違う?」

「だとして、それが何だというのだ?」

 振り返ることなく答える彼に、彼女は夢で見た彼の姿を思い浮かべていた。