❁.
「気がついた?」
朦朧とする意識の中、彼女が最初に目にしたものは見知らぬ青年の顔だった。
「三日三晩眠り続けてた。今日で四日目。もう夕暮れだよ」
だからだろうか? 身体が岩のように重いと、僅かながら動かせる首を左右に視界に入る限りを見渡す。そうしてやっと、ここが自分の見慣れた景色とは違う場所だということを理解した。
「ここは森の奥にある古城《ふるじろ》だ。四日前の猛吹雪の晩のこと、覚えてる? ここから少し離れた場所で君は倒れてたらしいんだ」
怪我をしていたと付け加える彼の口調は客観的。されど聞かされた自身の状況に、彼女は些か驚いていた。
そう────記憶がないのだ。
何も覚えていないどころか、何ひとつ思い出せないのだと。
まだ覚醒しきれていない頭で何を考えても、思考回路はただただ混乱するばかり。だから今は余計なことを考えるのはやめた。
「気がついた?」
朦朧とする意識の中、彼女が最初に目にしたものは見知らぬ青年の顔だった。
「三日三晩眠り続けてた。今日で四日目。もう夕暮れだよ」
だからだろうか? 身体が岩のように重いと、僅かながら動かせる首を左右に視界に入る限りを見渡す。そうしてやっと、ここが自分の見慣れた景色とは違う場所だということを理解した。
「ここは森の奥にある古城《ふるじろ》だ。四日前の猛吹雪の晩のこと、覚えてる? ここから少し離れた場所で君は倒れてたらしいんだ」
怪我をしていたと付け加える彼の口調は客観的。されど聞かされた自身の状況に、彼女は些か驚いていた。
そう────記憶がないのだ。
何も覚えていないどころか、何ひとつ思い出せないのだと。
まだ覚醒しきれていない頭で何を考えても、思考回路はただただ混乱するばかり。だから今は余計なことを考えるのはやめた。