資料運びが終わってから、ひなたと奏は昇降口の自販機で飲み物を買おうとしていた。



「僕コーヒー、西井さんは?」

「私はいいよ」

「じゃあお茶にする。お茶なら飲むでしょ。」



 ガコン、と音がして缶が2つ下から出てくる。


「喉渇いてたんだ」


 ひなたにお茶を渡してから、奏はコーヒーの蓋を開けると飲んだ。

 その横顔を見ながら、ひなたは呟いた。



「似てる」

「え?」

「少女漫画に出てくるライバルキャラに似てるよ、奏くんって。」

「ライバルキャラ?」



 奏はコーヒーを飲むのをやめて怪訝そうな顔をした。



「本読むでしょう。顔きれいでしょう。茶髪でしょう。穏やかでしょう。少女漫画のライバルキャラってセオリーはみんなそんな感じなんだ。」

「そうなんだ。え、でもそれってつまりどういうこと?」

「うーん、どういう事っていうか。格好いいライバルキャラに見えるんだ、私には。憧れるよ。グッジョブいい仕事。」

「腑に落ちないけど、そういうもの?。……ふーん、ヒーローじゃないんだね。」



 それからひなたと奏は2人で通学路を喋りながら帰った。