放課後。

 ひなたが机で漫画を読んでいると、冴がやって来て、声を掛ける前に後ろから漫画を覗き込んだ。



「何読んでるの?」

「あれあれ、少女漫画、連載中の」

「ふーん。」


 
 冴が立ち去らないのでひなたは顔を上げた。



「どうしたの?」

「そうそう、ひなたの事先生が呼んでたから。それを言おうとしてたの忘れて」



 ひなたは慌てて立ち上がって、職員室へ向かった。



 職員室に行くと、前の待合の廊下のベンチに、奏が来ていた。
 奏は気付いて顔を上げた。



「あ」

「奏くん」

「西井さん、どうしたの?」

「係。多分雑用に呼ばれたんだ」



 ひなたが聞いた。



「奏くんは?」

「ちょっと用事で。転校関係の資料貰いに。来たばっかりで多いんだ。」

「そうなんだ」



 職員室に入ると思った通り、社会科の先生の雑用だった。

 問題を作った後の資料を、資料室に戻して来い、とのこと。


「あ」


 資料を持って職員室を出ると奏が待っていた。


「待ってた。終わっ……てないな」


 奏は薄いファイルを置くと、ひなたの手から社会の資料を取り上げた。



「ついでに持っていく。重いでしょう。西井さんは、このファイル持って」

「え、いいよ」

「良いから。僕暇だし。丁度いいしね」



 何が丁度いいのかひなたには分からなかったが、ひなたはそのまま奏に資料を運んでもらってしまった。