次の休み時間。

 奏がひなたの席にやって来て口を開いた。


「西井さん、さっきのってどういう事?」


 奏は腑に落ちない様子でひなたを見返した。



「屋上、立ち入り禁止なら、なんで西井さん入れるの?。まさかとは思うけど、鍵持ってるの?」

「秘密にしてくれるなら。」



 ひなたは言った。


「絶対誰にも言わないって約束してくれるなら話すけど、してくれないなら言えない。」


 奏はひなたをじっと見つめた。



「考えてみれば、学校の屋上なんか鍵がないと入れない。僕はその時校舎を案内されてる途中で居たけど。鍵持ってるんだね。」

「うーん、言いにくいけど、正解。」



 ひなたが言うと、奏はプッと吹き出した。



「最低。どこで手に入れたの?」

「誰かに聞かれると困るから、教室では言わない。」

「そう。駄目だよ、そんなことしちゃ。西井さん不良じゃないんだから。」



 奏が言った。



「もし手に入ったとしても、僕なら鍵はすぐ返すよ。そんな変な使い方しない。見つかったら困るし。」

「だって」

「笑っちゃう。早く返しなよ。探してるかもしれないし。」

「返したくないの。秘密にしてよ、頼むから。」



 手を合わせたひなたに、奏は笑いながら返した。


「一緒に返しに行ってあげてもいいよ。ああ驚いた。西井さんって変わってる。」


 キーンコーンと次の授業を告げるチャイムが鳴って、奏は席に戻って行った。