「反省した?」


 誰も居ない資料室で奏が言った。



「僕はライバルキャラじゃない。漫画になぞらえたら許さない。随分じゃない?。飽きたらポイなんて。」

「違うよ……」



 ひなたが言うと、奏はようやく押し付けていたひなたの手首を緩めた。


「こっちの台詞。好きにさせると思ったら違うよ。」


 奏はそこでいつもの調子に戻った。


「まったく。追いかけさせたいのかな?。」


 奏は独りごちる。



「僕は君が好きで。容姿これで中これで、幸せにできる自信あって。何がいけないの?」

「いいよ、奏くんは」



 ひなたがボソボソ言った。



「ライバルキャラとは実らないっていうか、少女漫画のライバルって大体高値の花で、庶民には手が届かないんだ。」

「ライバルもう聞き飽きた。漫画以外考えらんないの。馬鹿なんじゃない。」

「奏くんには分かんないよ」



 ふいに、ひなたは釣り合わないと言われた事を思い出してしまった。


「どうして西井さんが泣くの。」


 ちょっと困った顔をして、奏は押し付けていた手首を離し、ひなたを抱き寄せた。


「西井さんが好き。何か言われたんでしょう。気にしなくて良いのに。」


 カーテンの隙間から入る日差しが、細く伸びて壁の時計を照らしている。

 ひなたに奏がキスした。