それは移動教室の時だった。
委員会で冴が居なかったので、ひなたは一人で筆箱を持って教室を出た。
すると、違うクラスの女子の一団が、自分の方を見て話しているのに気がついた。
「……だよね」
「そうそう」
ひそひそと囁く女子たちは感じが悪く、あからさまに悪口めいた事を当てこすっている人も居た。
さっさと行こう、とひなたが思った時、その中の一人が、いきなり声を立てて言った。
「ってか釣り合わないんだよね。山居くんと。」
すると他の女子達も迎合して言った。
「考えて欲しい」
「身の程を弁えてよ」
「あなたに言ってまーす」
ひなたを見ずにそれだけ言うと、女子たちは蜘蛛の子を散らす様にきゃいきゃい言いながら向こうへ行ってしまった。