「てかさ、名前教えて!俺美上 由(みかみ ゆう)!ゆうでいいよ」

「四ツ木 天花。呼び方は何でも」

「てんか!素敵な名前だね。漢字はどうやって書くの?」

「天国の天に、普通にアサガオとかの花。」

「へぇー!ぴったりだ!名が体を表してる」

「ふふっ笑…どこが?笑」

あまりにも素直に伝えてくれるから、つい笑ってしまった。今まで進めてきた足取りを由は止めて、キョトンと私を見つめる

「てんし…」

あまりの小ささに聞き取ることができなかった

「んーと、ごめん。なんて言った?」

由の綺麗な金色に染まった、目に少し被っているサラサラな髪の毛を風が揺らす。髪の隙間から綺麗な二重瞼の優しい目が私を捉えた。

「すげー可愛い、てんか」

そう言った由の白い頬は少し赤く染まっていた。そう言っている私も同じようになっているだろう。
 私は返事に困った。なんて言えばいいだろう。初めての経験だ。昨日見たドラマも勿論ドキドキした。でも今はそれよりもドキドキしている。心臓がはち切れそうだ。

「ありがと…ございます」

あまりの恥ずかしさに、敬語が出た

「やばっ…かわいーい!いきなり敬語になってんのも可愛い!恥ずかしがってんのも可愛いし、もう何者?」

そう言って由はしゃがみ込んで顔を隠す動作をした。

時間を確認する。式が始まる5分前。頑張って走ったら2分前には着くだろう。

「遅刻する!走ろ!」

そう言って私は由の手を引っ張った。お兄ちゃんの手より頼り甲斐のある大きな手だった。