「……だがお嬢さん、あなたはあの祠を倒しただろう?」

「……まあ、そうですね」



これは別段隠すことではないと思った。

隠していいことなどないし、きっとこれからもここに赴くことはあるだろうから、変な諍いは起こしたくない。



「でも、きちんと倒れないように管理していなかった村長の責も少なからずあると思います。これに懲りたら、きちんと台座にあの祠は固定すべきです」

「はは、何十も下のお嬢さんにお説教されるとは、大人として情けないことこの上ないですな」



村長さんは失笑を浮かべたあと、気味の悪い人形のように不自然に歪めた。



「けれど、倒したことは事実でしょう?」

「……そのことについては、申し訳ありません。弁明する余地もないですね」



それほどまでに、あの祠はこの村にとって大事なものだったのだろうか。

……だったら、そう簡単に倒れるような奇妙な固定方法にはしないと思うけれども。