……これ、すごく、振り向きたくない、なあ。
いやわたしの不注意のせいが大半を、というかすべてを占めているのだけれど、でもそれでも軽く当たっただけで崩れるっていうのもおかしい話ではあって、
……などと、つらつら言い訳の言葉を並べながら、薄目で背後を振り向いて、予想通りの光景が広がっていたことに、がくりと肩を落とした。
あの、目印として教えられたよくわからない祠が、台座の上から倒れてしまっていた。
そもそも、何を奉っているのかよくわからないものだったし、小さなお社の中にはわたしでも知らない言語が書かれた石碑のようなものが仕舞われている。
……変なしきたりが残った村って、やっぱり存在するんだなあ。
正直いろいろ面倒なので何も知らない見てないフリをしてしまいたい、けど。
『あ、この祠、もし倒したらちゃんと形だけでも直しとけよ。形だけでいいから』
この仕事を頼んできた人にそう言われた言葉が脳裏をよぎったのち。
「……まあ、倒したのはわたしだしなあ」
小さくため息をついて、随分と軽いひび割れた古いお社を、よいしょと持ち上げた。