「……はい、」



顔も名前も覚える気なんてさらさらない人間だったものを埋める時、シャベルの先端に当たったもの。



それは─────夥しいほどの、白骨。



「かなり古い年代と思われるものもありましたし、……たぶん、それが理由ですよね?」

『ああ、まあな。……じゃ、村出たところで待っててくれ。いま向かってるから』

「はい、ありがとうございます」



つー、つー、つー、と。

会話が途絶えた音を耳元で聴きながら、ふと背後を振り返った。


固定されていない祠、心霊スポットと噂される所以、老人が見当たらない村、……祠の下に埋められていた、夥しい白骨と化した人骨。

考えるのは野暮だと思っていても、どうしても苦笑いがおちてしまった。



「……本当に、こんな因習が残っている村があるなんて世も末ですね」



まあ、わたしも人のことを言えた義理は、正直ないけれど。



「はやくあの人のところへ戻らないとですね」



何しろ、人手がとんでもなく少ないらしいから。

お迎えが来やすいようにちょっと村の外まで歩こうかな、と歩き出そうとした時。


何か匂う気がして、すん、と袖口で空気を吸った。



「……帰ったら、まずは死臭を洗い流しましょうか」



また、すぐ何かを頼まれてもいいように。