ひどく冷たい、怪しさ満点の言葉だったと思う。

真偽を確かめるでも、恐怖を覚えるでもすれば普通の人だと、多少不審さが限界突破している人間だと納得できた。



……それなのに。



「そうかそうかあ、あ、もしやお嬢さん、あの男前のお兄さんのお知り合いかい?」

「え?……いつも黒いスーツ着てる人ですか?」

「ああ、やはりそうか。なんだ、それを早く言うてくれ。誤解して悪かったなあ、いつもありがとさん」



なぜか今までの笑みとは違う、おそらく本心からの笑顔を、村長さんは浮かべていた。

それも、怖気が走るほどの朗らかな、満面の笑みで。



「夜道と背後には気をつけて帰りなさい」

「……はい。こちらこそ、余計なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」

「いいや、こちらの方こそお兄さんのお連れさんとは知らず。毎度お世話になっておりますので、今後ともご贔屓によろしくお願いいたします」