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「……はあ、」
ざく、と。日々聞いている音とはまた違った音が響いた。
炎天下のなか、人目につかない山の奥。
額を伝う汗は、焦りからか、それとも疲れからか。
……まあ、圧倒的後者ではあるのだけれど。
「もう。ここにわたしを呼びつけた人はさっさとどこかに行っちゃったし……」
またひとつため息をついて、ざく、と先端が尖ったものを突き刺した。
─────茶色の、土の中に。
「掘る作業なんて、さすがにわたしでもやったことないですよ……っ」
がっ、と。再度強く土の中に大きなシャベルを差し込んだ。
ほとんどヤケに近い。
農作業なんかもちろんしたことなんてないし、シャベルを使う機会なんて今までついぞなかった。絶賛花の高校2年生を謳歌している人間を舐めないでほしい。
「高校生って、いきなり山に来て地面掘るものなのかなあ……」
まだ高校生になって日は浅いけれど、これはなんか、違う気がする。それも、学校をサボってまで。