神社に着くと、蘭の友人と思われる女の子達が小走りに近寄って来た。 

 喜びのあまり、お互いの手を合わせるように叩き会っている。
 今日という日を楽しい時間にするため、来てくれた彼女達は今回の協力者であった。

 さとし君の心を開放的にし、私と会話しやすい雰囲気作りに一役買ってくれたのだが、今はそのことも忘れたかのようにこの時間を楽しんでいるようだ。

 何て素晴らしい子達だ。
 普段見かけない浴衣姿に、お互いをほめたたえている。

「凄いね、この浴衣とっても可愛いね」

 悲鳴のように聞こえる喜びの声も、子供ならではのようだ。

 私は茜と待ちわせ場所に選んだ、境内横のベンチに近づいて行く。

 そこに座り、周りを見渡せることに安心をしていた。
 先生は町内の顔見知り、守君や私も、幼馴染が子供を連れての再開に喜びを感じていた。

 何気なく先生を見ていると、友人と思われる女性と手を合わせ悲鳴のような声を出していた。
 どうやらその喜びの行為は、子供だけの物ではないことを知り驚いていた。

 少し距離置き目に映る景色に、冷静な感情を受け止めることが出来ている。
 優しく光る提灯の下、楽しそうに会話をするのを見ているだけで、心は満たされていた。

 子供の頃は毎年訪れていたのに、いつから参加しなくなったのだろう。
 大人になり地元を離れる者も入れば、地元に居ても出かけるのがおっくうになり、楽しみを自ら遠ざける者もいる。

 私は楽しさしか伝わらないこの場所の雰囲気に、何故か感傷的になっていた。