先生が染めた浴衣には、シャボン玉のような柄が描かれている。

 ぼやけたもの、ハッキリした柄を取り込むことで、幻想的な印象を与えていた。
 それに赤い帯を使用することにより、その姿はとても華やかで目立つ存在になっていた。

「これ、本当に先生が染めたのですか? いえ、その、自分では浴衣にこんな色使いをするなんて発想がなかったから、なんか圧倒されちゃって」

 言葉遣いがわからなくなるほど、私は驚いていた。
 先生はそんな私を無言のまま見つめ、微笑んでくれた。

「私が用意したやつもかすんじゃうなー」

 そう言って差し出したのは、この日のために自ら準備した、かんざしだった。
 柔らかい金属を使用し、スズランの花を形どった飾りを揺らしている。

「あら、京子ちゃんが作ったの? 素敵じゃない」

「はい、今日は蘭に一番目立ってもらいたいと思いまして」

 先生はかんざしを手に取ると、それを蘭の髪に通した。

「良いじゃない。本当にキラキラして目立つわよ」

 私も鏡で蘭に診せると、蘭も興奮気味に確認していた。

「こんなことも出来るのですね、あっ、ありがとうございます」

「まあ、これぐらい輝いてもらわないと、私の存在でかすんでしまうじゃない。でも馬子にも衣裳よ、馬子にも衣装」

 冗談交じりのその言葉に、二人は笑みを浮かべて見ている。
 私が浴衣が気になったのは、目立つことよりも何より着飾ることに蘭の可愛らしさが強調され、嬉しさを皮肉った言葉だった。

 二人から顔をそむけると、自然に顔がほころんでいた。