それも少し言葉に出すことを、ちゅうちょしているようにも視える。

 やはり無理が有ったかー
 敏感なお年頃だもん。おせっかいで有ることを気づかれたわよね。

「私……」

 蘭は目を合わせることなく、閉ざしていた口を動かし始めた。

「私、公園のトイレが苦手で、何だか怖くないですか」

「……」

 断られても、あの手この手で言いくるめようと考えていたが、共感出来るその言葉に、不覚にも意見が合ってしまっていた。

「そうそう、わかる。不衛生だしね。女性にとってトイレは、重要よね」

 気付くと滑るように出た言葉と同時に、高齢のおばさんのように手招きをしていた。
 いやいや、同感している場合ではない。
 でも確かにトイレのことを考えると、綺麗にこしたことはないのである。

「じゃあさー、私の家で食事しない」

 蘭ははじめと違う提案に、遠慮がちではあったが、小さく頷き承諾してくれた。
 私は母に食事の準備を頼むため電話をすると、自分でも少しばかり声色が高くなっていることがわかる。
 
 友達を家に招待する喜びとそしてもう一つ、茜を蘭に会わせたいと思う楽しみを、浮かび上がらせていたからだ。

 私を通し二人が友人になる、とても素晴らしいことに思えた。
 そんな計画もあり、いつものように水路横のベンチの場所を、通るように帰宅していた。

「京子さんは、帰りはいつも歩きなのですか」

「そうなの、ここを通ると会える友達がいるんだ。蘭より少しお姉さんなんだけど。……おかしいなー今日も来るようなこと言っていたのに」

 茜の話では、夏休みの間も学校の図書館を利用しているらしく、この道を通っていると聞いていた。
 蘭も付き合うようにしばらくその場で待っていてくれたが、その日、茜と会うことは出来づにいた。