翌日。ゴミ回収の準備をする蘭を確認すると、私は近づき話しかけていた。

「ねえ、今日は土曜日だから午前中で終わるじゃない。天気が良いから、一緒に近くの公園でサンドイッチでも食べない?」 

 突然の提案に驚いた表情にも見えたが、すぐに断ることもなく考えてくれている。
 笑顔を作りながらも、内心ドキドキしながら返答を待っていた。

「いいですねー、外で食べるの気持ちいいですよね」

 とても理想的な言葉が返ってきた。
 一瞬私は頬を上げたが、すぐに眉を歪ませてしまう。
 それは聞こえてきた声が、物静かな女性の声では無く、根暗な男性の声だったからだ。

 細めた目を開き確認すると、発言していたのは隣にいた守君だった。

 引っ込み思案の癖に、何で今日に限って積極的なの? 

 いつもらしくない行動に、嫌気がさしていた。
 何も知らない守君にアイコンタクトで伝えようと試みると、先ほどの言葉を慌てるように撤回していた。

「で、でも、僕は遠慮しとこうかなー」

 守君は実に物分りの良い子だった。
 それともテレパシーが使えるのかしら? 

 私はその言葉に安心すると、そのまま蘭の表情を確認していた。
 蘭は驚くように身体をビクつかせると、守君と同様の表情を浮かべている。

 不思議に思い困惑していると、壁際に有る戸棚のガラス扉には、鬼の形相をしている私が映っていた。
 どうやら自然に、強張ったものになっていたようだった。

 いけない。いけない。

 手で表情を直すと、説得するよう話しを進めていた。

「用事があってもさー食事はとるじゃない。一緒にどうかなー」

 蘭は考えている。