会社を後にし、緩やかな坂を降ると、同じ高校に通うさとしが、待っています。
「さとし、おはよう。迎えにきてくれてありがとう」
定時制に通う私達の間では、夕方や夜でも、顔を合わせた時の挨拶は、おはようと声を掛け合います。
「おはよう。まあ、今は落ち着いているしね」
実家の工場で働くさとしは、いつでも仕事を抜けられると、時折このように、四百CCのバイクで迎えにきてくれます。
学校は駅に程近い場所なので、電車で通うことは何の支障のないのですが、バイクでの通学は、大人になったと実感させます。
学校に着くと、同じクラスながらも、私は女性同士の友人。さとしは男性仲間と、別れるようにお互いの席に着きます。
この学校では席順は特にないので、暗黙の了解のように、いつもの場所です。
「おはよう蘭」
「おはよう」
席の隣には、中学時代のからの友人、ミッキーが座ります。
みゆきの名前をもじり、あだ名がミッキーです。
ミッキーの席の前には、入学して知り合った、アキラが座ります。
本名は竹田幸子(タケダサチコ)ですが、好きな男性芸能人が、晃と言う名前なので、何故か彼女も周りから、アキラと呼ばれています。
アキラは電車やバイクで通う私達とは違い、学校から程近い地元住民のようです。
サトシは友達と、楽しそうに会話をすると、私のそばに寄ってきました。
「蘭、俺ちょっと抜け出して、友達と遊んでくるわ」
ここのところサトシは、学校にきても授業に出る事なく、友人と遊びに出かけてしまいます。
一日の授業全て出る日は雨の日ぐらいで、それ以外は駅前に遊びに出かけてしまいます。
「サトシ単位少ないでしょ。真面目に出ないと」
「大丈夫だよ、数学はそんなにサボっていないから、三時間目の体育には戻ってくるから」
「二時間目もサボるの」
心配でこぼれた私の言葉に、笑顔で手を上げるさとしの姿は、不安しか残りませんでした。
また去年と同じように、単位が足りなくて留年してしまうのではないかと、考えてしまいます。
「ねえ蘭。ねえ」
「うん?」
会話をしていたミッキーとアキラが、身体を向け私に声をかけていました。
「給食の後、ちょっと付き合ってくれない」
定時制高校は、一時間目が終わると、給食の時間があります。
四十五分ほどの時間なので、食事を早く済ませば、休憩がてら、駅前のお店などに買い物に出かけることも可能でした。
「うん、いいけど……何買いに行くの」
「花。願いを叶えるお花」
ミッキーはハツラツと話していましたが、アキラはそれとは違い、否定するようにその花の存在を笑ています。
「最近噂らしいよ、ミッキーは子供の頃から知っているみたいだけど、蘭も聞いたことある?」
私も、その花の存在は、幼い頃に聞いた覚えがあります。
幼少期の辛かった時に、私もお願いしたいと思っていましたが、お小遣いを使うことのできなかった私には、縁のない存在でした。
友人達は、将来の職業や、可愛いお嫁さんなどとお願いをしていたのを覚えています。
「何となく、昔にね」
楽しそうに話し続ける二人でしたが、私の頭には、その内容が入ってくることはありませんでした。
幼少期のことを思い出し、作った笑顔とは、別の気持ちでいました。
「さとし、おはよう。迎えにきてくれてありがとう」
定時制に通う私達の間では、夕方や夜でも、顔を合わせた時の挨拶は、おはようと声を掛け合います。
「おはよう。まあ、今は落ち着いているしね」
実家の工場で働くさとしは、いつでも仕事を抜けられると、時折このように、四百CCのバイクで迎えにきてくれます。
学校は駅に程近い場所なので、電車で通うことは何の支障のないのですが、バイクでの通学は、大人になったと実感させます。
学校に着くと、同じクラスながらも、私は女性同士の友人。さとしは男性仲間と、別れるようにお互いの席に着きます。
この学校では席順は特にないので、暗黙の了解のように、いつもの場所です。
「おはよう蘭」
「おはよう」
席の隣には、中学時代のからの友人、ミッキーが座ります。
みゆきの名前をもじり、あだ名がミッキーです。
ミッキーの席の前には、入学して知り合った、アキラが座ります。
本名は竹田幸子(タケダサチコ)ですが、好きな男性芸能人が、晃と言う名前なので、何故か彼女も周りから、アキラと呼ばれています。
アキラは電車やバイクで通う私達とは違い、学校から程近い地元住民のようです。
サトシは友達と、楽しそうに会話をすると、私のそばに寄ってきました。
「蘭、俺ちょっと抜け出して、友達と遊んでくるわ」
ここのところサトシは、学校にきても授業に出る事なく、友人と遊びに出かけてしまいます。
一日の授業全て出る日は雨の日ぐらいで、それ以外は駅前に遊びに出かけてしまいます。
「サトシ単位少ないでしょ。真面目に出ないと」
「大丈夫だよ、数学はそんなにサボっていないから、三時間目の体育には戻ってくるから」
「二時間目もサボるの」
心配でこぼれた私の言葉に、笑顔で手を上げるさとしの姿は、不安しか残りませんでした。
また去年と同じように、単位が足りなくて留年してしまうのではないかと、考えてしまいます。
「ねえ蘭。ねえ」
「うん?」
会話をしていたミッキーとアキラが、身体を向け私に声をかけていました。
「給食の後、ちょっと付き合ってくれない」
定時制高校は、一時間目が終わると、給食の時間があります。
四十五分ほどの時間なので、食事を早く済ませば、休憩がてら、駅前のお店などに買い物に出かけることも可能でした。
「うん、いいけど……何買いに行くの」
「花。願いを叶えるお花」
ミッキーはハツラツと話していましたが、アキラはそれとは違い、否定するようにその花の存在を笑ています。
「最近噂らしいよ、ミッキーは子供の頃から知っているみたいだけど、蘭も聞いたことある?」
私も、その花の存在は、幼い頃に聞いた覚えがあります。
幼少期の辛かった時に、私もお願いしたいと思っていましたが、お小遣いを使うことのできなかった私には、縁のない存在でした。
友人達は、将来の職業や、可愛いお嫁さんなどとお願いをしていたのを覚えています。
「何となく、昔にね」
楽しそうに話し続ける二人でしたが、私の頭には、その内容が入ってくることはありませんでした。
幼少期のことを思い出し、作った笑顔とは、別の気持ちでいました。