ひと月余りが過ぎたころ、会社には複数の依頼が来るようになっていた。
やはり営業の守君の力……芝端君の紹介が有ってのことだろうか?
本日の業務が終わった夕方、守君は外回りから直接の帰宅とのこと、蘭は既に学校へ出かけている。
社内に残った私と先生は帰宅する準備をしながら、たわいのない会話をしていた。
「京子ちゃん。会社の雰囲気には、もう慣れた」
窓のカギを閉めながら、かけられた言葉に元気よく答えていた。
「はい。すっかり」
当初のアートデザイナーから離れてしまうという不安は、わずかながら前向きな考えが出来るようになっていた。
現在ここで働きながらチャンスが有れば、いくらでも作品が出品できると、考えていたからだ。
実際同じように兼任しながら作品を作るデザイナーもいるし、何より仕事を通じて新たなデザインの発見は、知識への財産になっているようだった。
心の中で窓際に置かれた植物に帰りの言葉をかけていると、先生も近づきそれを眺めていた。
代り映えのしない植物は、何故か私達に見られ恥ずかしそうに映っていた。
先生は見つめる植物から、気にかけていた事を思い出し話していた。
「そういえば以前話してくれた雨の日の彼女、今はどうしているのかしら?」
私はこの植物と出会うきっかけとなった茜のことを、まだ先生には話していなかった。
「すみません。言うのが遅くなりましたが、あれから彼女と再び出会って今は友達のように会話をしているんですよ」
「そうなの、それはよかったわね」
「茜ちゃんって名前なんですけど……」
言葉に詰まる私を先生は不思議そうに見ている。
「その子はどうしてこの植物を気にかけていたの?」
「それがまだその話はしていなくて、ただお花が好きな優しい子みたいなんです」
「あら、貴方と同じね。ご近所さん」
「えっ? いえ帰り道の、この植物を拾った水路横のベンチでたまたま会うだけなんですけど、住まいは確かこの辺って……」
会話の後、先生の眉を上げた意味深の表情を見て小さな疑問を感じていた。
「そう言えば彼女のことあまり知らないし、たまたまとはいえ私に合わせたように帰宅時間が一緒です」
それまでとは違った感情で話すと、先生はを楽しんでいるかのように話している。
「その子現実には存在しているのかしら? 京子ちゃんにしか見えなかったりして」
悪ふざけの発言であると理解しながらも、身体の芯に寒気を感じてしまう。
「やだなー先生、違いますよー、おどかさないで下さい」
取り乱す私に笑みを浮かべた後、掛け時計を見ていた。
「冗談よ、冗談。今お茶を入れるから一緒に飲みましょう。椅子にでも腰をかけなさい」
話しながらも、残りの戸締りの確認をしながら給湯室に向かって行った。
お茶が机の上に置かれると、先生は膝が触れそうな距離で椅子に座る。
お互いがお茶を一口すすると、気にとめてたかのように、私にこんな言葉を切り出してくれた。
「京子ちゃんは、いつも明るく振舞っているけど、心配事とかあるんじゃないの?」
思いもよらなかった言葉に、先程までとは違う表情に変えてしまう。
内心では嬉しかった。
でも、相談していいのか悩んでしまい、強がる姿をみせ答えていた。
「何でですかー? 私はいつも元気ですよ」
偽りの明るさを装うと、先生は椅子から少し腰を浮かせ私の肩に軽く手をそえた。
「ならいいんだけど。私には時折寂しげな表情を浮かべているように見えるから」
二人しか居ないこのタイミングで、心の中の不安事を先生に打ち開けようか迷っていた。
先生には失礼ながらも親には心配をかけられないと考えてしまっていたり、久しく会っていない友人に相談も出来ず悩んでいた。
優しく気に留めてくれてことに、ため込んだ心の言葉は甘える形でこぼれていた。
「先生……実は」
私の悩みは日々形を変えていた。
恋人の正が危険な外国に行ってしまうことは、私にとって大事なことのはずなのに。
その行為を否定する事により、苦しむ人が出てしまうっと理解している。
今も世界のどこかで苦しんでいる人のことを考えると、お茶を飲むこともためらい恵まれた環境を喜んでいる自分に罪悪感を覚えてしまう。
余りにも大きなその悩みは、知らなければ良かったなどと感じるほどだった。
会話の後先生の表情を確認すると、目線を逸らし考えていた。
「むずかしい問題ね」
沈黙後の重みのある言葉に、打ち明けたことを後悔してしまう。
そんな難問にもし解決策が有るのならば、すでに誰かが行い、こんな気持ちにはならなかったはずだ。
困らせている。そう感じると、明るく言葉を切り返し誤魔化そうと考えていた。
「学校の授業であなた達と絵画の勉強もしたことが有ったわよね。肖像画や風景。歴史の場面っと様々なことを学んだと思うけど、その中の一つ、ゲルニカのこと覚えているかしら」
視線を向け確認すると、そこには美術教師の表情に戻った橘先生が映っていた。
先生の言うゲルニカとは、スペインの都市ゲルニカがドイツ空軍に無差別に空爆された悲惨さを、芸術家ピカソが一九三七年に描いた絵画だ。
彼の幻想的で独特な画風からは攻撃的な描写はないものの、人々や動物の悲痛の叫びが聞こえ、目にした人々に悲しみや絶望感を与えさせる作品なっている。
「数年前にゲルニカの前で、デザイナー達が反戦運動をした話は貴方も知っているかしら」
「はい、ニュースでも取り上げられ私も同じ気持ちでした」
「何十年前の作品が世代を超えて現代も伝え続けている。凄いわよね。私達のデザインで苦しむ人達を救うことは出来ないかもしれないけど、でも何かを伝えることは出来るのでは無いかしら」
「デザインで表現ですか」
「そう。あなたのデザインを見た人が幸せを感じその幸せに近づこう。戦争なんかで日常を壊したくないと思ってもらうえたら、素敵なことじゃない」
先生の言葉は私の記憶として、頭の片隅に残っているような内容だった。
昔同じような話をしてくれたのか、それ以前に感じていたのかは思い出せずにいる。
作品を表現する舞台や内容はは変わっても、人に感情を与えることは同じで有ると痛感させられた。
「東南アジアに旅経つことに軽率な発言は出来ないけど、きっと彼のような先陣者が一歩踏み出すことによって、人々の考え方に影響を与え変化が生まれることは確かだと思うわ。それに医療施設を建築するのだから、きっと安全な場所で行うのではないかしら。もう一度話し合ってみなさい」
先生の一言一言が、私の心を軽くさせていくようだった。
相談してよかった。言葉に出してよかった。
今まで一人で強がっていた自分がちっぽけに感じるほどだ。
私の家に来た上品な人物。それは陰ながら私を心配してくれる先生が来てくれたのではないかっと勝手に想像をしていた。
想いもよらなかった相談が出来、時刻は六時半を回っていた。
帰宅をするため駅に向かい線路脇の道を歩いている。
追い抜くように私の横を通る電車内は、帰宅時の人で混み合っていた。
少し遅れるとあんなに人が沢山。今日も電車に乗るのは無理ね、遊園地から帰宅するお客さんも多そうだし。
そんなことを考えた私は、いつものように歩いて帰宅することにした。
時刻的に茜もすでに帰宅しただろうっと水路横の小道を通り、いつものベンチも通過していた。
人道りの少ないこの道は、当たり前のように寂しく感じほどだった。
空を見上げると今日は曇り空。
流石に月は陰っているわね。
そのことを確認すると、その日は茜に合えないことを何故だか理解している私がそこに居た。
家に着くと一階の居間では母がテレビの情報番組に夢中になっていた。
「お母さん、ただいまぁ」
母は返事をすることも無く、画面に食い入るような状態だ。
私は部屋に入ることなく扉の前で呆れるように話しかけていた。
「やだお母さん。声をかけているのだから返事ぐらいしなさいよ」
「うっうん」
注意するもおろそかな返事で答える母だったが、突然テレビを指差すと慌て話しかけてきた。
「ほら見て京子。滅多にみられないらしいから。満月の明かりで咲いて朝には枯れてしまうお花ですって」
画面に映し出されているのは、白く咲く大きな花だった。
過去のものながら早回しで再生された映像には、月明かりで花開くと数時間後にはしぼんでしまう一部始終が映っていた。
「へっー、世界は広いわねー。こんな不思議なお花があるの」
花には興味は無いと思っていた私だったが、知識や触れ合う機会が増えたことにより最近身近なものに感じている。
「こんなに綺麗なお花なのに、短命なんて可哀そうねー」
呟く言葉に共感し、悲しくも映ってしまう。
花びらを着飾るようにまとい開いたその姿は、何者にも負けない美しさを持っていた。
母は振り返り立ち尽くす私を見ると、にやけ顔で約束事のような言葉交わしてくる。
「貴方はこんなガサツだけど、健康だけは取り柄でよかったわね」
冗談で話す言葉に「はい、はい」っと呆れ答えていた。
二階に上がるため階段を上り始めると、思い出したかのように声をかけてきた。
「そうだ京子。正さんから電話が有ったわよ。遅くてもいいから連絡がほしいって」
母からの気兼ない言葉だったが、緊張のようなものを感じていた。
部屋に入っても、何も出来づに立ちすくんでしまう。
先生の言うようにもう一度正と話さなきゃ。
そんな考えもあったが、どんな会話をすれば良いのかわからず、その日から正に電話連絡することは出来なくなっていた。
「相沢さん。もうすぐ学校の時間だから、帰宅する準備しなさい」
「あっはい」
女性用の小さな更衣室に入り紺色の作業上着をロッカーにしまうと、代わりに薄手の赤いカーディガンに袖を通しました。
友達から教わったお化粧を確認するため、ロッカーの扉についた鏡を覗き込みます。
大丈夫。口紅も取れていない。
十七歳になった私は、子供のように浮かれたりはしません。
社会人として働いているのですから、お化粧やオシャレをして、いつも落ち着いていようと心掛けています。
私は取り出したポーチから口紅も出すことなく、そのままカバンにしまいました。
中学を卒業してこの会社、橘デザインに勤め一年が過ぎました。
当初は考えていなかった夜間学校。
いえ、社長に注意されるので定時制高校と言い直します。
そこに通っているのは、中学三年生の終わりに面接時での社長からの提案でした。
数年の会社だからと聞き自分のためだと説得もさせられました。迷いながら仲の良い友人にそのことを話すと、気が付けばその子と願書を出していました。
まあ、一番の決め手は、学費がかからないことでしょうか。
社長はいつも今後のためだと理由をつけ、色々なことを私に教えてくれます。
挨拶や文書、日頃の言葉遣い。電卓の使い方など、今では絵の描き方まで教わっています。
四時四十五分。腕時計で時刻を確認すると更衣室から出て再び社長の側により挨拶をしました。
「お先に失礼します」
「お疲れ様。気をつけて行くのよ」
「はい」
社長や息子の守さんは、今まで出会うことのなかった人物です。
今まで私の容姿に顔を歪める人は多くいましたが、そのようなこともなく家族のように接してくれます。
美術や芸術にたずさわるのだから個性があって良いと言ってくれます。
必要とされる時に必要な見出しなみをすれば、それで良いとも言ってくれました。
一体何なんでしょうか?
気づいてもいないのに何となく正当化していた自分を見つめ直すと、今では背伸びをしていることが子供だと感じてしまいます。
特にこの人の出会いがその気持ちを強調させました。
「蘭。お疲れー」
この方は数ヶ月前に入社した霞京子さんでした。以前は現代アートデザイナーで、雑誌に乗るほどの有名人だったそうです。
一度コーヒーラベルのアドバイスをもらったことがありますが、確かに的確というか、素人の私でもこの人は知識や経験を詰んだ、プロであることがわかるようでした。
すごい人だとわかっているのですが私より一回りぐらい年上なのに、いつも子供のようにふざけていて私の調子を狂わせます。
「お先に失礼します」
私はもう一度社長や守さん、そして京子さんに会釈をしました。
会社の玄関に歩き近づくと元気良い声がかかりました。
「蘭、行ってらっしゃい。彼に安全運転でと声かけるのよ」
心配してくれる言葉にもう一度会釈をしようと振り向くと、満遍な笑顔の京子さんが大きく手を振っていました。
私はためらいながらも小さく胸元まで手を上げてしまいました。
あっ。
年上の方に失礼だと思う気持ちと、今まで見せる事のなかった自分に恥ずかしくなっていました。
会社を後にし緩やかな坂を降ると、同じ高校に通うさとしが待っています。
「さとし、おはよう。迎えにきてくれてありがとう」
定時制に通う私達の間では、夕方や夜でも顔を合わせた時の挨拶は、おはようと声を掛け合います。
「おはよう。まあ、今は落ち着いているしね」
実家の工場で働くさとしは、いつでも仕事を抜けられると、時折四百CCのバイクで迎えにきてくれます。
学校は駅に程近い場所なので電車で通うことは何の支障のないのですが、バイクでの通学は大人になったと実感させます。
学校に着くと同じクラスながらも、私は女性同士の友人。さとしは男性仲間と別れるようにお互いの席に着きます。
この学校では席順は特にないので、暗黙の了解のようにいつもの場所です。
「おはよう蘭」
「おはよう」
席の隣には中学時代のからの友人、ミッキーが座ります。
みゆきの名前をもじり、あだ名がミッキーです。
ミッキーの席の前には、入学して知り合ったアキラが座ります。
本名は竹田幸子(タケダサチコ)ですが、好きな男性芸能人が晃と言う名前なので、何故か彼女も周りからアキラと呼ばれています。
アキラは電車やバイクで通う私達とは違い、学校から程近い地元住民のようです。
サトシは男友達と楽しそうに会話をすると、私のそばに寄ってきました。
「蘭、俺ちょっと抜け出して友達と遊んでくるわ」
ここのところサトシは、学校にきても授業に出る事なく、友人と遊びに出かけてしまいます。
一日の授業全て出る日は雨の日ぐらいで、それ以外は駅前に遊びに出かけてしまいます。
「サトシ単位少ないでしょ。真面目に出ないと」
「大丈夫だよ数学はそんなにサボっていないから、三時間目の体育には戻ってくるから」
「二時間目もサボるの」
心配でこぼれた私の言葉に、笑顔で手を上げるさとしの姿は不安しか映りませんでした。
また去年と同じように単位が足りなくて留年してしまうのではないかと考えてしまいます。
「ねえ蘭。ねえ」
「うん?」
会話をしていたミッキーとアキラが、身体を向け私に声をかけていました。
「給食の後、ちょっと付き合ってくれない」
定時制高校は、一時間目が終わると給食の時間があります。
四十五分ほどの時間なので、食事を早く済ませれば駅前のお店などに買い物に出かけることも可能でした。
「うん、いいけど……何買いに行くの」
「花。願いを叶えるお花」
ミッキーはハツラツと話していましたが、アキラはそれとは違い否定するようにその花の存在を笑ています。
「最近噂らしいよ、ミッキーは子供の頃から知っているみたいだけど、蘭も聞いたことある?」
私もその花の存在は、幼い頃に聞いた覚えがあります。
幼少期の辛かった時に私もお願いしたいと思っていましたが、お小遣いを使うことのできなかった私には縁のない存在でした。
友人達は、将来の職業や可愛いお嫁さんなどとお願いをしていたのを覚えています。
「何となく、昔にね」
楽しそうに話し続ける二人でしたが、私の頭にはその内容が入ってくることはありませんでした。
幼少期のことを思い出し、作った笑顔とは別の気持ちでいました。
翌日の午後。
室内の蛍光灯の灯りが優しく感じたのは、朝から降り続く小雨のせいだと思います。
シトシトとやまない雨が梅雨時期に入ったと実感させ、何故だか寂しい気持ちにさせます。
この日、社長と守さんは出かけ京子さんと二人で作業を進めていました。
数件の以来を京子さんが終わらせ、それを私が提出先ごとにまとめています。
手元の大きめの封筒が一部足りないことに気づくと気が滅入っていました。
私は時々資材置き場に入るのですが、入社した時から何だかあの中に入ることを苦手でいます。
不自然に扉が小さく、なにか違和感を持ってしまいます。
中には筆記用具や書類以外に、年代物の時計や電話、錆びたハサミも置いてあります。
窓も無く、一つの蛍光灯がそれらをぼんやりと照らしていると、少し奇妙な空間に感じます。
誰かに見られている。
あの部屋に入ると、そんな妄想が広がってしまいます。
でも、いえ。そんな恐怖感からでしょうか、
京子さんと一度あの部屋を覗き見た時、薄っすらと声が聞こえたような気がします。
「見つけたんだね」って。
そんな怪奇現象的なこと社長や守さんに、失礼だと思い言えずにいます。
不安になりながら視線をうつすと、京子さんは窓にもたれかかるように窓際に置かれた植物に話しかけていました。
その植物は京子さんが入社時に持参した植物です。
本人は気づいていないのか、時折誰かの愚痴をこぼしています。
一体何のために会社に持ってきたのでしょうか?
京子さんが水をあげているところを見たことがないので、特別大事にしているようには思えません。
見つめる私の視線に気づいて欲しいと期待を持ちながら重い腰を上げました。
資材置き場に入ると、一目散に目的の封筒を手にとり部屋を出ようとしました。
入り口に立ち振り向くと、興味本位のせいか部屋の中を見渡していました。
今日は怖くない。
心を落ち着かせているせいでしょうか、恐怖心が薄ていました。
何かあれば近くに京子さんがいると思う安心感から来るのでしょうか?
視線を部屋の奥に移すと棚に載せることなく、段ボールが二つ積み重ねて置いてあります。
以前、守さんに聞いたのですが、その中身は社長の旦那さんである先代社長の私物のようなものが入っているそうです。
段ボールに触れたことがあるのですが、上部の物はとても軽く中身が入っていないものと認識していました。
そうだ。目に付く奇妙な品物は同じように段ボールの中にしまえばいいんだ。
この部屋の怪しさを軽減されると考え付くと、自己持参しました。
背後を意識します。
うっすら聞こえる京子さんの声や物音に安心すると、私は段ボールの中身を確認しに恐る恐る近づきました。
何もないと勝手に解釈していましたが蓋を開け覗き込むと、外観の大きさに似つかわしくないほどの少量の物が入っていました。
中身は鉛筆で描かれた絵が数枚。それと透明なビニール袋に入れられた板が出てきました。
絵の方は動物やチューリップが描かれ、デッサンの崩れ具合から子供が描いたように思われます。
社長の旦那さんが親戚のお子さんからもらい、大事にしまったものでしょうか。
紙全体を豪快に使い、余白を残さない描き方に、私より上手だと頬を緩めました。
フッ。一丁前に私ったら。
デザイン会社に勤めていることに、自分を過大評価しています。
社長に教わり知識が少しついていますが、全然才能のないど素人であることは自負しています。
優しくそれを置くと、今度はビニールに包まれたものを取り出します。
中身の板は木製で、少し泥が付いていました。
他のものを汚さないように包まれていることがわかりました。
こちらも子供の執筆で、くささんたんかっと書かれています。
「くささん、たんか」
一体何の言葉でしょうか? 怖さを忘れ考えてしまいます。
私はそれらをしまうと、他のものを入れるのを諦め部屋を出ました。