私は幼い少女を全力で演じ、質問をしてみた。

「あのー、あんぱんには、こしあんと粒あん。また、表面にはゴマや桜が乗っていることもありますがー、本当のあんパンはどういうものですか?」

「パンの質問だね、今そのことに詳しい先生に変わるから待っていてね」

 どうやら、電話の先ではその道の専門家が待機していて、質問内容に応じ対応するようだ。

「京子ちゃんー、こんぬちわっ」

 変わったのは少し方言が抜けきらない、年配の男性の様だった。

「よろしくお願いします」

「あんぱんのスツモンだね。京子ちゃんっはー、あんパンすつかに?」

「はい、大好きです」

「うーん、それは、いかった。先生もね、あんぱん大すつなんだわ。ぬっはっはっはっはっ」

 豪快な笑い方をする男性に、私もつられるように愛想笑いを返していた。

「そうなんですか。ぬっはっはっはっはっ」

「それでに、本当のあんパンっと言うかにー、最初に出来たっものわっ、実はコシアンなんだにー」

 私は嬉しさの表現を、こぶしを握り表していた。
 そして喜びのまじる言葉を返した。

「そうかー。やっぱりそうなんでぃすかー」

「でもにー、桜の塩漬けを乗すたのわっ、あんパンが誕生しった翌年に、明治天皇に献上するときに乗すたからー、さくらが乗っているのは特別なんだに。わかったかに?」

 期待はずれの説明が受話器から聞こえて来ると、思わず心の声が漏れていた。

「えーそれだとびみょうだなー」