余り説明をすること無く、一本の電話をかけていた。

 トゥルルルルルルー、トゥルルルルルルー、ガッチャ。

「はい、こちら子供電話相談室です」

 私は蘭に静かにするよう、口元に人差し指を近づけ表現した後、緊張を消すかのように自分の胸元に手を当てた。

「もちもちー、わたち、京子ちゃん、六歳です」

 子供のふりをして電話をかける、我ながらいい考えだと思っていた。
 蘭は電話先の相手がわかったようで、罪悪感を持っつかのように少し強張った表情を浮かべている。

 でも大丈夫。ラジオに流れることを考え、あえて年齢をごまかしてはいるが、私は利用条件に、年齢制限が無いことは以前から知っていたのだった。

 それよりも今は、私のセクシーな声が何処まで誤魔化せるか? それだけが心配だ。

「京子ちゃんの質問はなにかなー」

 どうやら私の美声は誤魔化せているようだ。私は安心し、指で表現したOKサインを蘭の居る方向に向けた。

「……ぷっ」

 一瞬吹き出す笑い声が聞こえた。
 驚きながら隣の方を見ると、蘭は顔を合わせないよう後ろを向いている。
 うつむき加減に、こらえているようにも見える。
 あれ、笑っているのかしら? 

 蘭の表情が気になったが、電話先のおじさんが私の邪魔をする。

「あれ、京子ちゃん、どうしたのかな?」

「いえいえ、何でもないです」

 確かにこちらから電話したのですから、失礼のないようにしなければ。
 大人として、社会人の見本として、ここは電話の対応を全力でしなければいけない。