そんな沈黙の中、彼女はスーッと手を伸ばし申し訳なさそうにつぶやいた。
「すみません……いただきます」
良かった。考えればあんぱんを拒む人なんて、この世に居るわけないしね。
安心する考えの中、相沢さんはあんパンを手にすると小さな声で話し始めた。
「社長に聞いたのですが、霞さんって有名なデザイナーさんだったそうですね。雑誌などにも取り上げられていたみたいで、凄いですね」
その声のトーンはよそよそしく聞こえ、あきらかに他人と話す言葉だった。
うーん、折角同じ会社で働くのだから、仲良くなって同じ時間を楽しみたいわよね。
何気なく拾った植物が視界に入ると、ある考えが浮かんでいた。
そうだ、茜と仲良くなったように明るい私を前に出してみよう。せっかくならもっと明るく冗談を入れて、でも美人がじゃまをして、三枚目が演じられるかしら。
そんな不安にもなりながら、自らピエロを演じてみた。
「うん、でも相沢さんが知らないなら、大して有名じゃないかも…………ね!」
最後の語尾で人差し指を頬に当てるように持って行き、更にウインクをしてみたが、相沢さんは目を合わせること無く、下を向いていた。
あれ、面白ポーズに気付いてない。
ここまで、ユニークにしなくてもよかったかしら、学生時代なら絶対ウケていたのに。
そんなことを思い、先走ったことを後悔していた。
一人すべっている自分が恥ずかしくなると、その指は眉をこするふりをして誤魔化していた。
眉を擦りながらも、相澤さんを見て思ってしまう。
彼女にはもっと明るい気持ちが必要よね。笑っていたら、きっと可愛いのに。
私は親しみから切り口にしようと考え、手に持つあんパンを見せ言葉をかけていた。
「一緒のあんパンを食べる。これで同じ釜の飯を食べたようなもんだから、私達は家族も同然よね」
彼女は表情を変えず私の顔を見て、沈黙している。
「これから、あなたのことは妹だと思って、蘭って呼ぶわ、あなたも私のこと姉だと思って京子姉さんって呼んでね」
彼女は親近感のもてる言葉にも動じない様子だった。
私は油断する彼女に、冗談交じりの言葉をたたみかけていた。
「おしゃれに、さんじゃなくミスに変えてもいいわよ、うっふっふっふっふっ」
蘭は不思議そうな顔をして話した。
「京子姉……ミスですか?」
私は慌てて彼女の発言を訂正していた。
「違うわよ、何で下に付けるのよ、普通上でしょ。それだと、私が何か失敗したみたいじゃないの」
どうやら上級な冗談が、あまり得意では無いようだった。
しかも、私より面白いことに、天然には勝てないと敗北感を味わっていた。
「すみません……いただきます」
良かった。考えればあんぱんを拒む人なんて、この世に居るわけないしね。
安心する考えの中、相沢さんはあんパンを手にすると小さな声で話し始めた。
「社長に聞いたのですが、霞さんって有名なデザイナーさんだったそうですね。雑誌などにも取り上げられていたみたいで、凄いですね」
その声のトーンはよそよそしく聞こえ、あきらかに他人と話す言葉だった。
うーん、折角同じ会社で働くのだから、仲良くなって同じ時間を楽しみたいわよね。
何気なく拾った植物が視界に入ると、ある考えが浮かんでいた。
そうだ、茜と仲良くなったように明るい私を前に出してみよう。せっかくならもっと明るく冗談を入れて、でも美人がじゃまをして、三枚目が演じられるかしら。
そんな不安にもなりながら、自らピエロを演じてみた。
「うん、でも相沢さんが知らないなら、大して有名じゃないかも…………ね!」
最後の語尾で人差し指を頬に当てるように持って行き、更にウインクをしてみたが、相沢さんは目を合わせること無く、下を向いていた。
あれ、面白ポーズに気付いてない。
ここまで、ユニークにしなくてもよかったかしら、学生時代なら絶対ウケていたのに。
そんなことを思い、先走ったことを後悔していた。
一人すべっている自分が恥ずかしくなると、その指は眉をこするふりをして誤魔化していた。
眉を擦りながらも、相澤さんを見て思ってしまう。
彼女にはもっと明るい気持ちが必要よね。笑っていたら、きっと可愛いのに。
私は親しみから切り口にしようと考え、手に持つあんパンを見せ言葉をかけていた。
「一緒のあんパンを食べる。これで同じ釜の飯を食べたようなもんだから、私達は家族も同然よね」
彼女は表情を変えず私の顔を見て、沈黙している。
「これから、あなたのことは妹だと思って、蘭って呼ぶわ、あなたも私のこと姉だと思って京子姉さんって呼んでね」
彼女は親近感のもてる言葉にも動じない様子だった。
私は油断する彼女に、冗談交じりの言葉をたたみかけていた。
「おしゃれに、さんじゃなくミスに変えてもいいわよ、うっふっふっふっふっ」
蘭は不思議そうな顔をして話した。
「京子姉……ミスですか?」
私は慌てて彼女の発言を訂正していた。
「違うわよ、何で下に付けるのよ、普通上でしょ。それだと、私が何か失敗したみたいじゃないの」
どうやら上級な冗談が、あまり得意では無いようだった。
しかも、私より面白いことに、天然には勝てないと敗北感を味わっていた。