私は彼女の笑顔を見て、心が穏やかになっていた。

 静かな風が吹くと、彼女からは良い香りがする。

 わー、いい匂い。この前の香りは彼女の物だったんだ、上品な子は匂いまで上品ね。
 名前も何故か浸しみを感じるし。

 私は自分でも鼻の穴が大きく開いているのが、わかるようだった。

「京子さんは、お花好きですか」

 唐突な彼女の質問は、目新しいカサブランカを持っていたから出たのだろう。
 正直花の容姿に興味の無い私だったが、彼女を傷付けてしまいそうで、答える言葉に迷っていた。
 建前的に好きと言えば、この場は丸く収まるだろう。

 でも、何だろう? 花に対して思っている感情は、好きや嫌いで表せない、それとは違うものだと理解をしていた。
 私は自分でも知りたいと思うと、真剣に考えてしまっていた。

「あまり考えたことは無かったけど、なんだろう。同じような」

「同じ……ですか?」

 彼女の不思議がる言葉に、慌てて答えていた。


「あっ、ごめんなさい。初めて会話するのに変な回答しちゃって。ええ、結構好きよ。そうねーチューリップは、よく子供の頃から描いていたわ。後ひまわりに紫陽花でしょ。でも紫陽花は毛虫が居るから嫌かも、後、名前は知らないけど、人ん地の庭先に咲くピンク色の花は、よく子供の頃チューチュー吸って怒られたわ、あれ甘いのよねー。夏はねひまわりのタネなんかも食べたことがあったわ、全然おいしくないけど」