持ち帰ることを、忘れてしまったことに愕然としていた。
 何をやっているんだろう、私ったら三日連続で忘れているわ。
 自分の失態に、顔を上げていられないほど、脱力感を感じてしまう。

 しばらくすると、下を向く私の前には、女性の足元が視界に入ってきた。
 
 あれ、立ち止まってこちらを見ているのかしら?

 疑問に思い顔を上げると、先日この場所で出会った、白い制服を着た少女が立っている。

 一瞬驚いたが、不安はすぐに安心へと変わった。
 それは明るい昼間だったことと、見上げた彼女はこの前とは打って変わり、可愛いらし笑顔でかしこまっていたからだ。

「こんにちは。隣に座ってもよろしいですか?」

 うっすら緊張していながらも、明るく話す彼女の言葉に、私は少しスペースを開けるべく、おしりを移動させた。

「どっ、どうぞ」

 隣に座る彼女を見て、色々なことを考えてしまう。

 この子、こんな表情もするのね。高校生だと相沢さんと同じ? いや、もう少しお姉さんかしら。
 制服も可愛いしけど、どこの学校だろう。 

 私は雨の日の出来事を質問したかったが、挨拶のように違う言葉を彼女にかけていた。


「ここで会うのは三回目だね。それにその制服、この辺では見ないけどどこの学校?」

 彼女はその質問に安心したのか、不安が消えたかのように答えた。

「私、遠くから引っ越してきたので、高校も他県の学校に通っています」

 答えた後、顔を赤らめ恥ずかしそうにしている。

 やっぱり雨の日の、泣いていた話はよそう。
 笑顔の彼女を見てそんなことを考えていた。