「えっ、どうしたの?」

「いえ、何でもないです」

 資材置き場の中は意外に広く、入り口の大きさとそぐなう、畳八畳分ぐらいの空間だった。
 室内には過去の作品や、参考資料。筆記用具などが置かれている。
 その詰め込まれている量の多さに驚いていた。

 余り整理整頓していないな、筆記用具も無造作に置いてあるし、新品の鉛筆なんか束になり、輪ゴムで止められているじゃない。

 歩きながらまじまじ見渡すと、形の古い木製の定規や、使われることのなくなったそろばんなども置いてあった。

 なーにこのコンパス両方針になってるわ、どうやって使うのかしら?

 初めて見る物に興味を覚えていた。

 こっちは昔の作品の資料だ、これも歴史を感じて楽しくなるわね。

 資料を手に取り作品をぎょうしすると、小さな不安が込み上げていた。
 私の微笑みも、作ったものに変わると、そっと資料を元の場所に戻していた。


 就業時間が終わり、帰りの駅では遊園地に訪れた人達で、ごった替えしていた。

「うわー、あんなに沢山」

 流石にあの中に入って行くのは、勇気がいるわね。

 乗り物から聞こえる絶叫と、その中で喜ぶ子供達のはしゃぎ声は、天気の良い午後の日差しに溶け込んでいた。

 私は時折声の聞こえる方を見つめ、水路横の小道に向かっている。