「これ、いいんじゃない! 英字にカタカナ、漢字も使用しているのにバランス取れていて、お互いが邪魔して無いじゃない」

 そのラベルには中央にCOFFEEと書かれ、その上にメーカー名、下部分に漢字で深味と記載があった。
 どの文字も主張することの無く、シャープで控えめなフォントと文字サイズだった。
 その雰囲気は単純ながらも、大人っぽさを感じさせる。

 私の言葉に皆が注目すると、相沢さんが慌てて立ち上がり近寄って来た。

「あっ、それダメです。私が描いたやつです」

 その言葉に驚きながら見ていた。

「基本に忠実と言うか、先生に教わったんでしょ、この配置バランス。全体を使い無駄がなく良いじゃない」

 ただ残念に思えたのは、そのロゴの下に雫が水面に落ち、跳ね上がるような描写がされていたことだった。

「社長に勉強になればって言われ描いただけなので、私のは出せませんよ」

 彼女の言葉が耳に届かないほど、私の興味はデザインがに向けられていた。
 そこには何回も修正された後が残り、困惑したことも感じ取れていたからだ。

 そうよね、この場合ミルククランと呼ばれる、王冠の形に飛び跳ねる描写を描きたくなるわよね。 

 でも、それだと文字の静けさを邪魔してしまうし、大げさすぎる。
 何度も描き治し鉛筆のあとが残っているのは、彼女も納得がいかなかったのだろう。
 無いと寂しいし、有れば有るで、文字のバランスと合わない。


 そのことが伝わると、お節介ながらも修正せずにはいられなくなっていた。