しばらくして、窓からの明かりがオレンジ色に映ると、先生は壁に掛けられた時計を気にしている様子だった。
 先ほどの少女も机の上を片付け、先生の側に寄って来た。

「社長時間なので上がらせていただきます」

 軽く頭をさげると、更衣室と思われる部屋に入って行く。
 私も気になり時計を確認すると、時刻は四時四十五分だった。

「先生、あの子は誰ですか?」

「彼女は相沢蘭さん、私の知人からの紹介なの、事務作業をお願いしているのよ」
 更衣室から出てきた彼女は、もう一度先生と私に頭を下げ会社を後にした。

「少し早めに退社するんですか?」

「相沢さんは定時制の高校に通っていて、遅れないように少し早めにあがらせているのよ」

「高校生かー」

 私は立ち上がり、会社の窓からこっそり彼女を確認していた。
 少しながら哀愁を感じる彼女に、興味を持ったのだろうか。

 坂の高い位置にあるこの建物から、見下ろすように覗き込むと、駅に向かうと思われた彼女のもとに、オートバイに乗った男の子が迎えに来ているようだった。


「へー青春しているじゃん」

 どこから見ても健全な不良少年少女。あれ位の年齢が一番楽しいかな?
 夕日に照らされている彼女達を見て、私は何だか嬉しくなっていた。
 窓際に置かれた小さな植物も、一緒に夕焼けを楽しむようで嬉しそう。


 やだ、貴方。今喜びを表現していたでしょう。
 私は一瞬、意志を持っているような錯覚を起こし、そんなことを考えていた。