昨日の上品そうな少女より、肌があうのだろうか? 
「それにしても寂しい社内ね、仕事で忙しいとは無縁のようだわ」
 改めて見る室内に、腰に手を当てため息のような言葉をこぼしていた。

「どうぞ」

 彼女はいつの間にか、お茶を用意し差し出してくれていた。
「あっありがとうございます」
 無愛想だけど、一応教育されているんだ。


 子供なのに、指示されなくても行動出来ていることに感心させられた。
 彼女は席に着くと、ノートを広げ何かを描き始めている。
 鉛筆の動きから書類などの作成でも無く、デッサンをしているように見える。


 事務服を着ているけど、デザインを担当しているのかしら? 
 そんなことを考えながら見ていたが、仕事と言うより練習をしているように思えた。
 全てのことが会社らしくなく映り、不安な気持ちにさえさせる。


 一体この数年で、何が有ったのだろうか? 自分が浦島太郎になったように思えた。
 数分がたち入り口の扉が開くと、先生が現れたことに喜ぶほどだった。

「京子ちゃんいらっしゃい。ごめんなさいね、自宅がガスの点検日だったのすっかり忘れていたわ」

 暑い暑いっと言わんばかりに、手でうちわのように仰いでいる。
 急いで来たのが感じ取れた。
「先生、お久しぶりです」


 子供の頃そろばん塾で知り合った、守くんのお母さん。
 幼い頃から知っている私には、親戚のような優しい存在だ。
 美術の先生だと知った時は、私は意識しその学校に入ったほどの特別。


 そんな先生も定年退職をして、現在は六十二才になるのかな。