驚きのあまり歩く足を止め、花束を持つ手に力が入るほどだった。
 なーに? ちょっと気味が悪いじゃない。驚かせないでよ、ハッキリ見えるから幽霊ではないわよね。
 この世の物で有ることを理解すると、急いで手で涙をふいていた。


 先ほどまでの悲しみを忘れてしまうと、少女が一人で居ることに、心配になっていた。
 とても細身な体系の彼女は、ブレザータイプの征服を着ている。
 クリーム色の上着に、緑色のスカートだった。


 見たことも無い制服だ。どこの学校だろう? 
 彼女は傘を持っているが、差してはいない。 
 側により表情が確認出来ると、彼女はベンチ横に植えられた植物、ツツジの辺りを見つめていることに気付いた。


 何を見ているのかしら? 
 彼女が見つめている視線の先を目で追うと、そこには割れた植木鉢と、ほうり出されたと思われる植物が転がっていた。
 彼女はそれを見つめ……雨? イヤ、涙で頬を濡らしていた。


 あれを落したのかしら? 
 私は足取りが遅くなりながら、声をかけようか迷っていた。
 心配だけどどうしよう? 最近良いこと無いからなー、変に声をかけて事件に巻き込まれてもわりに合わないし。


 でも後日彼女が新聞に載っていたら後味悪いなー。
 そんなことも思いながらも、その場を通過してしまう。
 歩いては止まり、歩いては止まるを繰り返すと、数歩離れたところで我に返っていた。


 何をやっているんだろう私、子供が泣いているじゃない。
 心の迷いがなくなると、声をかけずには居られなくなっていた。
「あのー、どうかしたの」


 彼女は私の言葉に振り向くこともせず、転がった植物を見つめ答えた。
「この花が……可愛そうで」
 私も彼女の言葉に誘導されるように、その植物を見つめていた。