ポッツ。ポッツ。
 百合を包む包装紙に雨音が聞こえ始めると、その間隔は徐々に短いものに変わった。
 体に当たる雨粒の感触がわかると、雨が衣服を重くし、寒さまでも感じてしまう。


 あーあっ、家に着くころには花も服も台無しだ。
 全ての出来事に呆れ自分が無様に思うと、無理に作っていた笑顔の頬に、一粒の大きな涙がこぼれていた。
 あれっ、泣いている。悲しんでいるんだ私ったら。


 今の気持ちが喜怒哀楽のどれであるかを理解すると、更に自分が惨めに思え悲しさが止められない。
 先ほどまでと違った感情が、嘘のようにあふれ出す。


 上手く行くと思っていた。コンクールも、仕事も。それに正のことだって。
 全て駄目じゃない。
 それに今だって、正の考えに反し気晴らしのため贅沢な買い物をしている。


 素晴らしいことを行おうとしている彼に、激励の一言も掛けてあげられない。
「私ってこんな可愛く無い女だったんだ」
 今の自分を声に出してしまうと、とても情けなく思えていた。


「ヒック、ヒック」
 涙を止めようとすると、その行為が更に惨めに思え涙があふれ出す。
 誰かに見られないよう、周りを意識しながら止められない涙を手でぬぐいながら歩いていた。


 数十メートルつづく小道を歩き続けると、少し奇妙な光景が目に映った。
 道沿いの一角には、憩いの場所としてわずかながらのスペースとベンチが置かれている。
 本来なら明るい日中や、夏の涼し気な木陰として、訪れる人が居てもおかしくないが、今は肌寒い夕時。


 まして雨も降り出しいる。そんな中、学生姿の少女が一人たたずんで居た。
 薄暗い中に一人の少女。
 そのシチュエーションだけでも一瞬氷ついてしまう。