花を強調するかのように内装は純白に明るく塗られ、植物が収められた器は黄緑色や明るい茶色でカラフルだった。
 これよこれ、私には派手な場所が似合うのよ、見ているだけで気分良くなるわ。
 東京に居れば手に入らない物は無い。


 そう思わせるほど季節感の無い花や、外国の花達がそろっている。
 しばらくの間、それらを見て気を紛らわせていた。
「何かお探しですか」


 店員の声がかからると、何も考えずに見た目が派手な花を指さした。
 花に興味の無い私でも、百合ぐらいは知っている。
 外国の名前が付けられたその奇麗な百合は、カサブランカという名前だった。


 ガラスケースに仕舞われ真っ白なその花は、通常の百合よりも自分を強調するかのように花を広げている。
 まるで花自体が澄ましているかのようだった。
「上品な花」私もこんな風になりたかったのかしら。


 ガラスの扉をスライドさせながら開けると、近付く人を誘惑するかのように香りを漂させている。
 私は気に入り、五本購入していた。


 家までの間、手に持つカサブランカを見ながら私は微笑んでいた。
 こんな豪華な花、今の家には似合わないわね、誰かにプレゼントしようかしら。
 そんな贅沢なことを思い、歩いている。


 線路と並行するようにバス通りも有るが、人道りの無い一本脇にそれた小道を歩く。
 その小道の隅には、昔使われていた水路跡が残り、現在は観賞用として整備され綺麗な水が流れている。
 人工的な小川には鯉も居れば、誰かが放った亀も居る。 


 時刻は日没に近づき灰色の薄暗い中、私はその景色を眺め歩いていた。
 しばらく歩くと顔に微かに当たる冷たい感覚。私は空を見上げ手をかざした。
「雨だ。天気予報を、見てくればよかった」