頭の中を淡い色の世界は、更に煌びやかな色に染め上げて行く。
 海外での生活をするため、私を連れて行きたいのだろう。
 数か月前の私の海外暮らしに、何か考える物でも有ったのだと感じた。


 まあ、海外での暮らしも悪くはない。デザイナーとしてそこからの復活も絵になるしカッコいいと想像を膨らませる。
 イギリスでも良い、アメリカでも良い、アジアなら台湾辺りもおしゃれである。

 先ほどの気持ちは、さらにふつつかなものに変わると、鼓動のリズムに合わせるように、祭囃子の笛の音を吹き鳴らしたい気分だった。



「外国ってどこ? イギリス? それとも」
「ヨーロッパじゃないよ、東南アジアなんだ」
「えっ? 東南アジア」


 私はイメージと違う場所に、理解出来なかった。
「ちょっと待って、そんな危ない場所に何で正が行かなきゃいけないのよ」
 そう私が声を荒げたのには、理由があった。


 現在世界では、未だに戦争を繰り返している国が有る。
 数十年前に終戦を迎えた日本にとって無縁のような話では有るが、ニュースで知る残酷な情報に恐怖を感じている。
 正の話す東南アジアはそのうちの一つだ。


 どんな事情が有るにせよ、私にとってその野蛮な行為は、時代遅れでありナンセンスだった。
 これからの生活だけでも考え悩む私が、何故そのような会話をし、関わらなければいけないのか。
 
 意味がわからず、現状を受け止められずにいた。


「戦渦だった場所から軍隊が撤退した話は、ニュースとかで知っていると思うけど」

 コーヒーカップを見つめていた正だったが、そっと目線を私に移し丁寧な口調で話始めた。

「これから、その国は復興を視野に入れると思うけど、何よりも戦争に巻き込まれた多くの人々が、まともな医療も受けられないんでいるんだ。その人達のために俺、清潔でしっかりした建物、施設を作りたいと考えているんだ」


 いつになく真剣に話す顔、今まで見せることのなかった表情におどろいていた。