願いを叶えるため咲き、そのことを求められるペンタス。
 少女はその意味よりも、純粋に咲いていることだけを喜んでくれたのではないかと、考えていた。

 きっとペンタスも、存在を認めてもらったことに喜び、その子の願いを叶えたいと、今も出会うことを待っているんじゃないかと。

「私も願い事してみようかな。その子が大人になって願い事をしていたら、昔みたいに魔法のお花に戻っているかもしれないじゃないですか」

 私はおじいさんから、改めて願いを叶える方法を聞いていた。

 夕方の時刻。昼と夜の切り替わる時だけ、ペンタスは魔法の花になるとはなしている。
 願い事は一つだけ。
 声に出さずに心の中で、そのことをペンタスに願いますと、最後に伝えると言う内容だった。

 考えた結果、最初にお願いをしたのが、その少女と友達になりたいと言う内容だった。

 何を信じてしまっているんだろう。
 間抜けな話だが、その少女が誰だかわからないため、願いが叶ったのかわからづじまいでいる。

 その後、病状が悪化すると、願いは、身の回りのことに変わっていった。
 残念ながら、どれも叶うことなく、ただ花が枯れていくのを見届けるだけだった。
 今はペンタスが花を散らせながらも、再び蕾を実らす姿に、勇気をもらっている。

 弱々しいながらも、この花のように強くなりたい。

 建物のガラス窓に、うっすら映り込む自分の姿は、その存在からかけ離れていた。

 私の名前は、月下明里。

 きっと夏の日差しを浴びて育つ、ペンタスのようにはなれないのだろう。