────…ヨーロッパの城のような会場が、神の手による彫像のような"男"の空気感と、
 もうひとり。

 猛烈に美しく且つ、野生美をおもわせる"男"の動向によって、
 (たちま)剣呑(けんのん)な趣へと変わっていった。




 シンッーーー、と。

 静まり返った来訪客は、
 雲霞(うんか)のごとく
 そぞろに気を引き締めていく様子で。




 ────"彼ら"は謂わば、国家賓客である。



 贔屓(ひいき)されているご令嬢の誕生祭とは言えども、やはり。

 富者たちや大使館、芸能関係にあたる富豪主たちなど。


 上流階級に属する来賓客は、
 皆一様に、
 "彼ら"の機嫌を損なわぬよう、留意するのが鉄則。



 それは、
 パーティー列席者のなかでの
 暗黙のルールであった。




 ────…しかしどうやら。

 今回の事態は、只ごとでは無いらしい。




 ハイグレードなパーティー仕様の正装を身にまとい、すぅっとなだらかな所作で半身を屈め、とある少女の落ちた目線に合わせようと顔を傾げたシルバーブルーの髪の男、



 ウォン・アーウェイ。



 彼が初めて────…、

 大衆に見せたその姿を。


 "彼自身"から、会場内の女性に声を掛けるなどこれまでに
 一度たりとて無かったのだ。