茜さんとは、部署は違うが同じ会社らしい。
そして、会社の飲み会で席が隣になったのをきっかけに仲良くなり、付き合い始めたようだった。

しかし、茜さんはかなり嫉妬深く、会社でも女子社員と仕事の話をするだけで不機嫌になり、その女子社員に嫌がらせをしたりするようになってしまったらしい。

そして、女性と話しただけで浮気認定をされ、仕返しのつもりで茜さんは浮気をするようになってしまったと響希は言った。

その度に話し合いをし、「別れたくない!わたしを一人にしないで!」と泣きつき、優しい響希は結局許してしまうのだった。

「でも、響希はそれでいいの?茜さんと一緒にいて、幸せなの?」

わたしの言葉に黙り込む響希。
そして、少し黙り込んだあと「あいつさ、身内が居ないんだ。」と話したのだ。

「小さい頃に両親を事故で亡くして、お祖母ちゃんに育てられたらしんだけど、そのお祖母ちゃんも1年前に亡くなってしまったらしくてさ。」
響希は、悲しそうな表情でそう言った。

「だから、一人にしないでって言われると、、、つい、許しちゃうんだよ。」
「響希、、、」

そんな自分が情けないとでもいうような表情で、響希は切なく笑った。

わたしは響希に何と声をかけたらいいのか分からず、しばらくの間、この狭いワンルームに静けさが漂っていたのだった。