「ねぇ、花澄。」

秋空を見上げながら、響希がわたしを呼んだ。

「なに?」
「幼稚園の時の約束、覚えてる?」
「幼稚園の時?大きくなったら結婚しようねってやつ?」

わたしがそう言うと、響希はわたしに視線を移し「そう。」と言った。

「俺、あれ、、、本気にしてるんだけど。」

響希の言葉に驚くと共に「えっ?」と照れ笑いをしてしまうわたし。

「でも、今すぐじゃないよ?同棲し始めたばかりだし、花澄に指輪も買ってあげたいから、ちゃんと準備が整ったら、俺と結婚してくれる?」

真っ直ぐな瞳でわたしに向かって言う響希は、照れくさそうに微笑んだ。

わたしも恥ずかしくなり、冗談で「それがプロポーズなの〜?」なんて言ってしまう。

「違うよ!ちゃんとそのときが来たら、きちっとプロポーズします!」
「ロマンチックなのがいいなぁ〜!」
「ロマンチックかぁ〜。俺、苦手だなぁ〜!」

そんなことを言い合いながら笑うわたしたち。

そして響希は「あとさ、もう病院行かなくていいんじゃない?薬使うと、手荒れして痛いでしょ?」と言い、「俺と一緒にいれば治るから!」なんて冗談を言って笑った。

しかし、響希は冗談のつもりかもしれないが、本当に不思議と響希と手を繋いでいるとは、手汗をかかなかった。

「うん、そうだね。そうしよっかな!」
「俺、花澄の手、好きだよ。」
「手だけ?」

わたしが冗談のつもりでそう訊くと、響希は立ち止まり、両手を広げ大きく叫んだ。

「花澄の全部が大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

わたしが恥ずかしくなるほど、大通公園には響希の声が響き渡っていた。

そして、わたしの方を見ると優しく微笑み響希は言った。

「愛してる。」






―END―