響希に抱き締められ、「好きだ」と言われ、わたしは心臓が口から出てきそうな程ドキドキしていた。
そして、両手の行き場に困っていた。

なぜなら、わたしの手は今、汗でいっぱいだからだ。

すると、響希が「花澄は?俺を抱き締めてくれないの?嫌だった?」と不安そうな声で言った。

「ち、違うよ?抱き締めてもらえて嬉しいし、わたしも、、、響希が好き。」
「それなら、」
「だって、手汗が凄いんだもん。」

わたしがそう言うと、響希は「俺が気にすると思う?俺の服で手拭いてもいいから。」と言い、冗談ぽく笑った。

"俺の服で手拭いてもいいから"という言葉に、わたしもつられて笑う。

そして、わたしはそっと響希を抱き締め返した。

「ありがとう。」
耳元で聞こえる響希の声は優しく、わたしは強く響希を抱き締めたのだった。

「俺は気にしないからな?それも含めて、花澄が好きなんだから。」

わたしは響希の言葉に涙を流すと「ありがとう。」と言い、しばらくの間、わたしたちは抱き締め合っていた。