わたしは自宅のアパートが見えると、一度足を止めた。
すると、ワンテンポ遅れて響希も足を止め、わたしを見る。

ここからでも見える。
今日も貼ってある、、、

わたしは響希に向かって「あれ見て。」と自分の部屋がある二階部分を指差した。

響希はわたしからわたしの自宅方向へと視線を移した。
すると、「えっ?」と言って目をこらしたあと、「何あれ、、、」と言ったのだ。

響希は、わたしより先に歩き出した。
そのあとをわたしも続いて歩いて行く。

二階に上がり、わたしの部屋のドアを見た響希は「何だよ、これ。」と怒りを露わにしていた。

今日もまた「ここに住んでる人、多汗症です!」「キモイ!」「死ね!」と書かれた紙が貼られていたのだ。

思い切りその紙を剥ぎ取る響希は、ビリビリに紙を破き、そして「あいつだ、、、。」と呟いた。

「えっ?」
「これ、茜の仕業だ。このクセのある字は、茜の字だ。」

わたしは、響希がこんなに怒ったところを見たのは初めてだった。

「でも茜さん、わたしの家知らないはずだよ?」
「そうだけど、、、でも、これは茜の字だよ。これいつから?」
「今週が始まってからだから、月曜日からかな、、、。」

わたしがそう答えると、響希は少しの間、何かを考えてから「そういえば、病院に茜が居たって言ってたよな?」と言った。

「うん。」
「患者の個人情報って、見れないのかな?」
「でも、誰でも簡単に見れるものじゃないと思うよ?」
「そっかぁ、、、でも、それしか考えられないんだよなぁ、、、。」

そう言って難しい顔をする響希。

しかし、わたしの住所が茜さんに特定された原因が分かるのに、それほど時間はかからなかった。