わたしは気まずいながらも、茜さんに案内され、一番奥の診察室へ向かった。
そこは、わたしの担当してくれている栗原先生がいる診察室だった。

茜さんは栗原先生がいる5番診察室を指すと「ここ」と言い、すぐに立ち去って行った。

久しぶりに会う茜さんにドキッとしたが、わたしは横開きの診察室の扉をノックした。

「はい、どうぞ〜。」

中から栗原先生の声が聞こえ、わたしは扉を引くと「失礼します。」と言って中に入った。

栗原先生は眼鏡をかけた年配の男性の先生だ。

「最近は、どう?薬効いてる?」
パソコンに何かを打ち込みながら、栗原先生は言った。

「原液を薄めてしまうと、やはり効き目がなくて、、、濃い状態で使うと1日くらいは汗がかかなくなります。でも、毎日使うと手が荒れちゃうので、使うのは週1にしています。」

わたしの言う言葉に相槌もせず、話を聞きながらパソコンに何かを打ち込み続ける栗原先生。

「じゃあ、今回も塩化アルミニウム1本出しとくから。はい、もういいよ。」
「あ、はい、ありがとうございました。」

わたしは先生に一礼すると、診察室を出た。

待ち時間が長い割に診察はいつもサラッと終わってしまう。

わたしはまた待合室で呼ばれるのを待ち、その間に響希に診察が終わったことをLINEで連絡した。