病院の正面玄関から入ると、総合受付横にある機械から受付番号の紙を取った。
そしてわたしは、総合受付に診察券と保険証を出し、麻酔科に受診したい旨を伝え、広い待合室の長椅子に座り、麻酔科に呼ばれるのを待った。

多汗症と聞くと、皮膚科ではないかと思うかもしれないが、実は麻酔科が専門らしい。
以前、個人病院の皮膚科に受診したことがあったのだが、皮膚科の先生は多汗症の知識があまり無く、それから色々調べ、この総合病院の麻酔科に通うようになったのだ。

すると、総合受付の前を見覚えのある人が通った。

横顔と後ろ姿だけしか見ていないが、あれは茜さんだ。
茜さんは事務員の制服を着て、麻酔科の方に向かって行った。

響希と同じ会社で働いてたはずだけど、ここに転職したのかな?

自分が麻酔科を受診するだけに、茜さんが麻酔科の方へ向かって行ったことに不安を感じた。

受付を済ませてから40分後、「104番の方、麻酔科の待合室でお待ちください。」とアナウンスがかかった。
ここは総合病院で患者数も多い為、予約を入れても予約時間通りに呼ばれないのは当然になっていた。

104番、わたしだ。

わたしは立ち上がると、麻酔科のある方へ歩いて行き、診察室が並ぶ待合室にある椅子に座って待った。

すると、それから10分後くらいだっただろうか。
「104番の方。」とクラークさんが案内に来たと思い、ふと声のする方を見ると、そこには茜さんが居たのだ。

わたしを案内するために呼びに来た茜さんは、104番がわたしだということに気付くと、あからさまに嫌な顔をして睨みつけてきた。