響希との約束の土曜日。
わたしは久しぶりに仕事着以外でスカートを履いてみた。
デートでもなく、ただ病院あとに友達とランチに行くだけなのに、オシャレをする自分に恥ずかしさはあったが、誰かと出掛けること自体が久しぶりでオシャレをしたい気持ちもあったのだ。
響希は9時半頃、車で迎えに来てくれた。
車に詳しくないわたしだが、そこそこの値段がするはずのよく街中で見掛ける黒い車だった。
「おはよう!」
車内から助手席のドアを開けながら、響希は言った。
「おはよう。ごめんね、迎えに来てもらっちゃって。」
わたしは平然を装い、そう言ったが、内心は響希の車の助手席にドキドキしていた。
「誘ったのは俺からなんだから、気にするなよ!さあ、行くか。」
そう言うと、響希は車を発進させた。
響希は、わたしが通う病院の場所を知っていた。
なので、スムーズに病院まで行くことが出来た。
病院に到着すると、わたしは「終わりそうになったら、LINEするね!」と言い、響希の車を降りた。
響希は車内から手を振ると、どこかへ時間を潰しに行った。
漫画喫茶でも行くのかな?
高校時代の響希の部屋にある本棚にビッシリ漫画が並んであるのを思い出し、わたしはそう思った。