「ちょっと、こんな時間に何してるの?!」
そう言って驚くわたしに、響希は「花澄のこと待ってた。」と言った。

「もう、寒かったでしょ?とりあえず入って。」
「お邪魔しま〜す!」

茜さんに見つかってはいけないからと、わたしは急いで自宅のドアを開け、響希と共に慌てて中に入った。

「もうビックリさせないでよ。うちに来て大丈夫なの?茜さんは?」

玄関で靴を脱ぎながらそう訊くわたしに、響希は苦笑いを浮かべ、そして「実は、別れたんだ。」と言った。

「えっ?!」
「さすがに俺も限界でさ。また浮気して、泣きついてきたけど、今回は許さなかった。花澄にまで迷惑をかけたのが、許せなかったんだ。」

そう言う響希は、どことなく切なく、複雑な表情を浮かべていた。

きっと、茜さんを一人にしてしまった罪悪感に心を痛めているのだろう。
わたしは響希の表情からそう感じ取っていた。

「そっかぁ、、、頑張ったんだね。」

わたしの言葉に、悲しそうに笑う響希。

茜さんとの別れは、相当大変だっただろう。
あんなに響希に執着していた茜さんだ。
そう簡単に別れを受け入れるはずがない。

しかし別れを決断し、決着をつけて、こうして報告に来てくれた響希をわたしは抱きしめたい気持ちでいっぱいだった。

そんな響希は、何となく頬がコケて痩せたように見えた。

「ねえ、もうご飯食べた?」
わたしがそう訊くと、響希は「まだ。」と答えた。

「カレー作るから、食べて行かない?」

響希を元気付けたくて発した言葉は響希に届き、響希はわたしの気持ちに応えるように「食べる食べる!」と元気よく言った。

「俺、手伝うよ。」
「じゃあ、玉ねぎ切って?」

そう言いながら、わたしたちは台所に並び、カレーを作ったのだ。