「んー、水没ですね。」

故障した事務所の電話を修理に来た業者の人が言った。

「えっ?水没?花澄ちゃん、飲み物こぼしたりしてないよね?」
「あ、はい、、、こぼしてません。」

「何で水没なんて」と腕を組む課長。
他の人たちも固定電話の水没を不思議がっていた。

わたしはある小売業の本社で事務員として働いている。
その会社のわたしのデスクで使っていた固定電話が故障したのだ。

わたしは、故障の原因を聞き、ショックを受けた。
それは明らかにわたしの手が原因だからだ。

わたしは小さい頃から多汗症を患っていた。

"多汗症"とは、発汗をコントロールする神経に異常があり、何でもない時でも手汗を書いてしまう病気なのだ。

手汗くらい、誰でもかくでしょ?なんて思われがちだが、わたしは重度な方で、酷い時は手を洗ったあとのように滴るくらい手汗をかくこともある。

わたしの場合は、手汗だが、人によっては、顔、足、脇などに症状が出て、生活に支障の出る病気なのだが、それをなかなか理解してくれる人はいなかった。

完治する治療方はなく、緩和させる薬や治療法も効果があるかは人それぞれ。

生きている限り付き合っていかなくてはいけない病気だった。