ゆっくりと扉に向かって歩き出す。


「おい、ブス!」

「君!」


後ろで灰色と金色があたしを呼ぶ。

それを無視して扉に手を掛ける。



「コータもマオもそんな女放っとけよ!」



オレンジ色が2人に吠える。

そうだよ、こんな女放っておくのが一番だよ。



「大丈夫だから」



お飾りの姫は、何も求めないから。



「お、まえ!《瑠依(るい)さんの妹だからって何でも許されると思うんじゃねぇよ!!」


あたしの背中にオレンジ色の叫び声が掛かる。



"何でも許される"



その言葉に怒りを抑え込んで振り返る。



「ふざけないで。何度も言ってるけど、好き好んで"姫"なんてなった訳じゃない」



そこを間違えないでください、と念を押す。



あたしは姫なんて地位も何も要らない。

生きてる事さえ苦しいのに、あたしが何をしたの?



"あの時"の記憶が脳内に流れて呼吸が上手くできなくなる。


それを悟られないように、口を噤むオレンジ色を前髪越しに一睨みして、溜まり場を後にした。