「迷惑だとでも思ってるわけ?」
「思ってるんじゃなくて、実際迷惑…だし迷惑かけてるから」
シャンプーをされながら小さな声でゆっくりと話す。話す気なんてなかったのに、いつの間にかペースに乗せられて話していた。
"あの時"の事は流石に言わなかったけど兄によって姫になった事。兄とあたしの所為で、龍神の人達は迷惑してるし、嫌な思いだってしてる筈。
気持ち良いシャンプーと重たい話は釣り合っていなくて。
「ごめんなさい。気にしないで下さい」
無理矢理話を終わらせた。
「あんた、そんなに自分を責めて苦しくないの?」
それから暫くお互い無言だったし、もう話は終わったように思えていたのに、シャンプーが終わった瞬間、再び話が戻ってしまった。
「苦しい、けど」
自分を責めて苦しくない訳が無い。
全てを兄の所為で片付けてしまえば、あたしも楽だったかもしれない。だけど、兄の所為だけじゃ収まらないから。
少なくとも、もっとあたしが拒否していれば、龍神の姫にはならなかった。