「まぁ、そんなに怯えちゃって。可愛いわぁ……食べちゃいたい」


「ふ、ざけんじゃねぇぞ!おっさん!俺はソファに居るからな!そのブス頼んだぞ!」


食べちゃいたい発言に、今日一番の怯えを見せた灰色は逃げるように店の何処かへ消えてしまった。



「逃げられちゃったわぁ。まぁいいわ。さ、あんたの髪切るわよ」


まずはシャンプーね、とあたしは腕を引かれてシャンプー台へと連れて行かれる。不思議と触れられた腕を見ても、震えなかった。


…灰色への対応で男の人としての認識が0に近くなったからだろうか。



「てか、何なのこの髪。なんで結んである下がザクザクに切られてんのよ。信じらんない」


あたしを座らせながら、シャンプーの用意をするこの人はあたしの髪の状態を見て怒ってる。


まだ結べる長さだった事も今知った。



「ちょっと聞いてんの?この髪どうしたのか聞いてんのよ」



考え事をしているあたしの頭が軽く叩かれる。あたしをまっすぐ見つめる瞳に嘘はつけなそう。