来たくもなかったのに連れて来られた美容室。正直、身体だって痛いしキツいし。髪だってどうでもいい。


だから、


「帰りたい」


切実に。小さく呟けば後ろから灰色の溜め息が聞こえてくる。



…鬱陶しく思ったかな?本当に申し訳なくて、いくら謝っても許されない気がする。



「おら、行くぞ」


「は、い」



先を歩き始めた灰色に大人しく着いて行く。


オシャレな店内へと足を踏み入れれば、


「あっらぁ!コータきゅんじゃないのぉ!久し振りぃ」


大きな声と共にワイルドなイケメンが走ってきた。



ハスキーボイスでオカマ口調、なんだけれど。見た目はとても整っている人。



「おっさん、近寄って来んじゃねぇぇ!」



灰色は青ざめた顔であたしの後ろに隠れた。



「ちょっと、あんた!退きなさいよ!アタシはコータきゅんと熱い抱擁を交わすんだから!!」


キッと睨み付けられて、身体が震え出す。