「顔なんて別に見たくもないから、最初はその束ねた髪にしてあげる」


優しいでしょ?首を傾げて笑う彼女のハサミを持った手が、近付いて来る。


抵抗も虚しく後ろで一つに束ねられた髪が掴まれて。



「ほーら。バッサリ」



躊躇なくあたしの髪が切られた。ハラハラと地面に落ちていくあたしの髪。


髪自体にはなんの思い入れもないけれど、この髪を龍神の人達にどうやって隠そうかと必死に考える。


自分で切った?


…それは不自然だ。


友達が切ってくれました?だめだ。あたしに友達なんて此処には"居ない"。


1人だけ。たった1人だけあたしの唯一の友達が別の学校に居る。中学から唯一仲の良かったあの子が。



とにかく、どうしよう。思考を巡らせて考えても良い言い訳が思いつかなくて。