「お前!瑠依さんがわざわば心配してんだからちゃんとしろよ!」



オレンジ色があたしを睨みつけて怒鳴る。

怒鳴り声に身体が震えて息が上手に吸えない気がして、浅い呼吸を繰り返して。



「…ごめ、なさい」


ごめん、ごめんなさい。うわ言のように呟いて謝る。


嫌いな奴の事まで兄の所為で、気にしなくちゃいけなくて。
あたしが存在してるだけで、迷惑掛けて。



小さな、小さな謝罪だった。



伝わらないかもしれないけどあたしの心からのごめんなさい、だった。


周りが息を呑む気配がする。



「ねぇ、君…」



金色がなにか言おうとするのを、あたしが遮るように口を開いた。



「あ、の。気にしないで下さい」



あたしなんて、と最後に付け加える。気にする存在でも気に掛ける価値もないのだから。



「お、まえ」


誰かは分からないけど確かにあたしに向けられた声。それを無視してソファから立ち上がる。



「ごめんなさい。今日は戻ります」



元々、食欲が一切なかったので丁度良い。ペコリと頭を下げて小走りで教室を出る。



身体が痛いけれど、この気まずい空気から早く逃げたい。


弱くて脆いあたしは逃げを選ぶ。



「ごめんなさい、って」



溜まり場で、誰かがそう呟いたのなんてあたしは知らない。