「面倒くせぇ。このまま行くぞブス」



面倒臭そうに空いた手で首の裏を掻いたかと思うと、訳の分からないことを言う灰色。首を傾げれば、ふわっと一気に視線の高さが上がる。



「いっ。ちょ、えっ?!」



気付いた時には所謂お姫様抱っこをされていて、灰色はそのまま歩き出してしまう。グラグラと揺れて、その度に激痛を伴う身体に歯を食いしばる。


教室を出る寸前に目に入ったのは、あたしを鋭く睨みつけるパンダ達。
……視線だけで人、一人殺せそう。


思わずそう思ってしまう程の視線に身震いする。



「あ、の」



教室から少し離れたところで灰色に声を掛けるけど、一瞥されただけで無視される。



「お、降ろして下さい」



控えめに灰色の肩を押せばグイッとあたしのことを抱きかかえ直す灰色。しっかりと支えられた身体とその格好の恥ずかしさに、泣きそうになる。


それに。
それに、身体が震えそうなのがバレたくない。



身体に走る激痛に耐えながらジタバタしてみれば、溜め息と共にゆっくりと降ろされる。